創立100周年記念事業
朱雀校地中庭整備事業
創立100周年記念事業として、朱雀校地の中庭整備事業を行います。
新たな庭へと生まれ変わらせるのは、本校卒業生でランドスケープアーキテクトの居場英則氏です。
在校生と未来の奈校生の為に行う本事業への寄付を募っております。
是非、事業内容を閲覧頂き賛同と共にお力添えをお願い致します。
居場英則
Hidenori Iba
ランドスケープアーキテクト
Landscape Architect
京都市出身。1985年、奈良高校を卒業。大阪大学工学部建築工学科を卒業後、不動産ディベロッパーに勤務。
2005年、株式会社CML一級建築士事務所を設立。
建築士として、建築プロデュースや街づくりプランナーとして活動。グッドデザイン賞など、多くの賞を受賞。
一方、ガーデンデザイナーとしても活動。
「京北・香りの里/六ヶ畔・花簾庭(京北ローズガーデン)」で、環境省の「みどり香るまちづくり企画コンテスト」入賞、
古都・奈良の世界遺産のひとつ、唐招提寺の境内にて、開祖・鑑真和上ゆかりの薬草園を再興するプロジェクトにて緑の環境プラン大賞・「緑化大賞」を受賞。
今回の奈良高校・創立100周年記念の朱雀校地・中庭整備事業では、創立50周年記念で整備された旧・法蓮校舎の中庭が造られた経緯にフォーカスを当て、新たな奈良高校の「原風景」を創出することを目指している。
創立50周年記念で作られた、旧校舎の「竪義の庭」「アテネの学堂」
50周年記念事業として法蓮校舎に設置されたプラトン・アリストテレス像
創立50周年記念で作られた、旧校舎の「竪義の庭」「アテネの学堂」
1973年、創立50周年を記念して旧校舎(法蓮校舎)に創立された「竪義の庭」「アテネの学堂」は、真に学問する姿を本校に再現し、建学の精神に帰り、この宝相華の校章に象徴される伝統ある校風を作興し、新しい奈良高校のよりよき出発の起点となるべく、同窓会、育友会、学校が連携して実現されたものでした。
「竪義の庭」「アテネの学堂」に込められた想い
「竪義」とは、東大寺、興福寺や延暦寺などの学僧達が、師の僧の指導のもとに、互いに対話し、討論し、正しい道理を竪てるための問答の儀式のことで、法蓮校舎の中庭は、これに因んで「竪義の庭」と命名されました。
この庭は、古代ギリシャ文明が西に流れて西洋文明の基盤となり、東に伝播してヘレニズムの世界を形成し、更に、東洋文明と深く関わり合うという、世界的史実史に基づいて構想されました。また、この庭の中央に建立するブロンズ像二体は、ルネッサンス期の画家である巨匠
ラファエロがヴァチカン宮殿の中に描いた、「アテネの学堂」の中心人物、プラトンとアリストテレスが対話する姿で、知の涵養の場であるアカデミア(学校)を象徴しています。
師弟の関係であった2人の思想は、理想と現実、思弁と実践、観念と観察と、二項対立的でありながらも、「対話」を通して止揚され、「真知」の共有へと向かうものであり、そうした学究の姿こそが、奈良高校の目指すところであるという想いが、この二体の像には込められています。
創立100周年で新たに創る「奈高の原風景」
朱雀校地に移動されたプラトン・アリストテレス像
朱雀校地へとつなぐ対話の風景
それから半世紀、本校は転機を迎えました。
2022年(令和4年) 4月、新生・朱雀校地に移転、新入生を迎えました。そして2023年、新校地にて、記念すべき創立100周年を迎えるにあたり、宝相華会、育友会、学校の三者が連携し、「自主創造」の校風の新たなる象徴として、朱雀校地の中庭を整備することとなりました。
朱雀校地に移動されたプラトン・アリストテレス像
法蓮校舎の中庭で約半世紀の間、奈高生の意識の中に対話の風景を与え続けた「アテネの学堂」のプラトン・アリストテレス像は、法蓮校舎から朱雀校地に移転されることが叶った数少ない、本校の卒業生、現役生、未来の生徒の紐帯となる存在です。この像を仰ぎ見て師と共に語り、「真知」を究め、明日を担う有為な人材が、
数多この中から巣立ちゆくことを祈念し、50年前に先輩方から未来の後輩達へと贈られた奈高生の原風景といえる存在でもあります。創立100周年にあたって、新たに朱雀校地にて整備される庭は、奈良高校の象徴であるとともに、生徒の交流・活動の場、そして奈高の移転の受け入れ先となった地域社会と連携する場所としても、その機能が求められます。
楕円構造(2つの焦点)を持つ中庭空間
サンピエトロ広場
楕円構造(2つの焦点)を持つ中庭空間
新たな学舎に作る中庭は楕円構造をとります。
ラファエロがヴァチカン宮殿に「アテネの学堂」を描いたルネッサンス期、同じローマのカンピドリオ丘上に彫刻家ミケランジェロがデザインした「カンピドリオ広場」、ヴァチカン宮殿前に建築家ベルニーニがデザインした「サンピエトロ広場」、いずれも楕円構造を持つ中庭空間です。今回の創立100周年記念の庭は、建築史・美術史にその名を遺す西洋の天才たちがデザインした楕円構造の庭にインスパイアされた空間構成を備えます。
「楕円」と「焦点」
楕円は、数学的には2つの「焦点」を持ちます。
この2点からの距離の和が一定となる点の軌跡が楕円です。
言い換えると、2つの焦点の、一方の焦点から発せられる光が、楕円の壁に反射して、必ずもう一つの焦点へ導かれるという性質を備えています。
この楕円構造によりできる2つの焦点は、例えば、東洋と西洋、師と弟子、先輩と未来の後輩、過去と未来、世界と日本、宇宙と地球、社会と自身など、2つの相対して対峙するものが関りを持ち、関係性を見出すメタファーでもあります。今回、この焦点の1つに法連校舎にあったプラトン・アリストテス像を移設します。
対話する庭、「百花繚乱」の百周年の庭
羅針盤の設置された中庭のイメージ
「羅針盤」の示す道
そして、もうひとつの焦点には新たな象徴として、「羅針盤」(石材レリーフ)を設置します。
羅針盤は、中国の四大発明品(紙、活版印刷、火薬、羅針盤)のひとつで、中国からヨーロッパに伝わり、列強の国々は新しい大地を求めて大航海時代を迎えました。新たに設置する「羅針盤」は、奈高生が未知なる世界へ飛び込むために不可欠なアイテムの象徴となります。
羅針盤の設置された中庭のイメージ
楕円構造の2つの焦点から発せられる光を白い線形で表現し、その線形で囲まれた中央に、学生の交流・活動の場、地域社会との連携の場、「プラザ(広場)」を設けます。新たに設置する「羅針盤」の上に立つ時、奈良高校のアイデンティティの象徴ともいえるプラトン・アリストテレス像と真正面に対峙することができます。自分自身の進むべき道を、自身や師と対話しながら見つけるための装置でもあるのです。
そして、羅針盤を手掛かりに、世界に向けて歩き出した後、どこへ向かおうと楕円の壁に反射した光は必ず、もうひとつの焦点である奈良高校の原風景ともいえるプラトン・アリストテレス像へと戻ります。
自らの進むべき道に迷い、壁に阻まれることがあったとしても、青春時代に師や友とのかけがえのない時間を過ごした自身の原点、奈良高校へと回帰し、自らの進む道や目標を見つめ直すきっかけになるはずです。
「百花繚乱」
また、今回、創立100周年に際し、中庭の植栽計画には、「百花繚乱」のコンセプトを据え、「百の個性、百の花が咲く庭」 として、多種多様な植物が、季節ごとに香り咲く風景をデザインしています。
西洋の経験知、東洋の創造知の2つを併せ持つ本校の新たな庭で、師によって導かれ、友と共感する3年間
を過ごすことにより、学問の探究という本校の伝統を継承し、未来へくり出すための真の知識と勇気を、生徒たちは涵養するでしょう。
道に迷う時、この庭で過ごす研鑽の時間がよりどころになる、そんな思いが本校の新たな庭に込められています。